スポーツではトレーニングの一環として、心肺機能の強化を図る場合があります。
心肺機能の強化というと、心臓や肺の能力を向上させたり、血液中の赤血球を増やしたりするイメージがあると思いますが、血管の増強にも注目が必要でしょう。
今回は、毛細血管を増強する方法を紹介した本を取り上げてみます。
心肺機能の構成要素
車に例えると、
- 心臓:エンジン
- 肺:キャブレター
- 血液:ガソリン
- 血管:パイプ
のような役割に相当するでしょうか。
エンジンをいくらチューンナップしても、ガソリンを供給するパイプが細くて、燃料の供給が不十分になっていると、エンジンの性能が最大限に発揮されません。
心肺機能の強化でも、同じことが言えるでしょうか?
心臓・肺・赤血球などが増強されても、酸素や栄養素を運ぶパイプである血管の発達が不十分だと、パフォーマンスが最大限に発揮されないでしょう。
毛細血管を増強する食材
「【図解】毛細血管が寿命をのばす」という本で、毛細血管を発達させる食材が紹介されていました。
(p.24)
とるだけでも毛細血管が増える食べ物があった!
実は、毛細血管を増やす手軽な方法があります。
それがシナモン(
桂皮 )、ルイボスティー、ヒハツ(ヒバーチ)などをとること。シナモンは料理や生薬としても使われているスパイス、ルイボスティーは高い抗酸化力があるといわれるノンカフェインのハーブティーです。ヒハツはあまりなじみがないかもしれませんが、沖縄では香辛料として使われています。
これらの食品には、毛細血管にある
Tie2 という受容体を活性化させる働きがあることがわかってきたのです。
毛細血管は細胞の隙間から適度に血液をもたらすことで、血液成分を配っています。
健全な血管には周皮細胞と内皮細胞がきちんと接着していることが欠かせません。
しかし、加齢によりこれらの接着が弱くなると、かえって血液がもれすぎてしまい、全身に血液が行きわたらなくなってしまったり、血流が低下してしまいます。
それが毛細血管の劣化が減少を招き、病気や老化につながるというわけです。
そこで救世主となるのがTie2です。
Tie2が活性化すると、周皮細胞と内皮細胞の接着が強くなるのです。
その結果、血流がアップしたり、ゴースト化した血管が復活することも!
ただし、たくさんとればそれだけ毛細血管が増えるというわけではありません。
シナモンやヒハツなら一日数ミリグラム程度で十分です。
食事や飲み物に「ちょい足し」したり、いつも飲むお茶を一杯ルイボスティーに変えるといった工夫で、日常生活に採り入れてはいかがでしょうか。
(p.25)
「毛細血管力」がアップする食べ物
シナモン
コーヒーや紅茶、ホット赤ワインに入れたり、トーストやヨーグルトにかけても
※長期にわたり大量に摂取すると肝臓に負担がかかる可能性がある。また妊娠中は摂取を控える
緑茶や紅茶の代わりに。ノンカフェインなので寝る前もOK
ヒハツ
香辛料として、そばやうどんなどに
参考文献:Maturation of blood vessels by haematopoietic stem cells and progenitor cells: involvement of apelin/APJ and angiopoietin/Tie2 interactions in vessel caliber size regulation.
Takakura N, Kidoya H.
Thromb Haemost. 2009 Jun;101(6):999-1005.
シナモンの注意点は後ほど詳細を記します。
→「シナモン」という名前で流通している食材には、実は3種類ほどあって、安物のシナモンは「カシア」という食材が使われています。カシアは肝臓に負担をかけます。
Tie2の研究論文
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19492139/
(DeepL翻訳)
概要
アペリンは,近年,ウシの胃液から分離された生理活性ペプチドである。
この遺伝子は77アミノ酸からなるタンパク質をコードしており,長鎖(42-77)と短鎖(65-77)の2つの活性ポリペプチドを生成することができる。
どちらのペプチドも、心血管系や中枢神経系に発現しているGタンパク質共役型の受容体であるAPJと結合し、活性化する。
アペリン/APJシステムが血管形成に必須の役割を果たしていることはアフリカツメガエルで報告されているが、哺乳類におけるその正確な機能は不明である。
血管の腔形成は、
1)単一の内皮細胞(EC)の細胞質内に内腔が形成される単一細胞の帯空洞化と、
2)細い筒状の帯内でEC間に新たな内腔が形成される帯空洞化
の2つの主要なメカニズムによって行われる。
単一細胞、帯空洞化ともに、その分子制御は正確には解明されていない。
アンジオポエチン-1(Ang1)は、血管の拡大を誘導することが報告されている。
アペリンは、ECに発現しているAng1の同族受容体であるTie2が活性化されるとECから産生される。
アペリンは、ECの増殖と凝集・集合を促進することにより、臍帯空洞化を誘導すると考えられている。
血管新生の際には、血管周囲に造血幹細胞(HSC)や前駆細胞(HPC)が頻繁に観察される。
これらの細胞はAng1を産生し、ECの移動を誘導することで、微細な血管網を形成する。
さらに、HSCs/HPCsはECsからのアペリン産生を誘導することができる。
したがって、この総説では、造血幹細胞/HPCが、アペリン/APJとアンジオポエチン/Tie2の相互作用を介して、血管の口径を調節していると推測している。
専門用語がズラズラと並んでいて、意味が分かりづらいですね。
キーワードとなる「Tie2」や「アンジオポエチン」で検索すると、他の説明が見つかりました。
アンジオポエチンとは?
毛細血管は壁細胞(外側)と内皮細胞(内側)の2重構造になっています。
そして壁細胞から分泌される「アンジオポエチン-1」という成分が内皮細胞に存在する受容体Tie2を元気にすることで、内側同士の細胞と外側がぴったりと密着し安定を保つことができます。
毛細血管の研究によって、自然界の植物の中に壁細胞から分泌される「アンジオポエチン-1」と同じようにTie2を元気することができる成分があることが判明しました。
アンジオポエチン-1と同様に、毛細血管のTie2受容体を活性化する成分が豊富に含まれている食品があると。それが、シナモンやルイボスティー、ヒハツといった食材というわけです。
他にもアンジオポエチン様の成分が含まれている食材が紹介されていました。
ブルーベリー葉/茎
抗老化作用が注目されているブルーベリーの中でも、宮崎県で特別栽培されているラビットアイ系ブルーベリーの葉/茎には、ポリフェノールの王様といわれるプロアントシアニジンが豊富に含まれています。
サンザシ
美しい赤い実には血行促進や消化吸収を促す作用があるとされ生薬として用いられています。また甘酸っぱく爽やかな美味しさから、ドライフルーツなどにして食用にも使われています。
月桃葉
日本では九州の南から沖縄、小笠原などに生息し、桃の実のような小さな花が三日月型に連なる姿から、その名が付けられたと言われています。葉から抽出されるエキスにはTie2を元気にすることに加え、抗酸化などの優れた働きが認められています。
代表的な食材であるシナモン、ルイボスティー、ヒハツについて調査をまとめます。
シナモン
シナモン(英: cinnamon)は、ニッケイ属(Cinnamomum)の複数の樹木の内樹皮から得られる香辛料である。
ニッキ(肉桂〔ニッケイ〕の音変化)とも。
また、生薬として用いられるときには桂皮(ケイヒ)と呼ばれる。
特徴的な芳香成分はシンナムアルデヒド、オイゲノール、サフロールなど。
香辛料としてのシナモンはシナモンの樹皮をはがし、乾燥させたもの。
独特の甘みと香り、そしてかすかな辛味がありカクテル、紅茶、コーヒー等の飲料やアップルパイ、シナモンロールなどの洋菓子の香り付けに使われる。
南アジア、中東、北アフリカでは料理の香りづけに頻繁に用いられる。
近縁種のシナニッケイ(支那肉桂、ニッキ、C. cassia)の樹皮からも作られる。ただしシナニッケイからつくられるものはカシアと呼ばれ、成分が若干異なる。
セイロンニッケイ(Cinnamomum verum)は「真のシナモン」と見なされることもあるが、国際通商におけるほとんどのシナモンはその近縁種のシナニッケイ(Cinnamomum cassia)に由来する。
シナニッケイ由来の香辛料はカシア(cassia)とも呼ばれる。
クマリンを含むため、過剰摂取により肝障害を起こす。
シナモンは京都の銘菓「八ツ橋」と似た香りがします。
「シナモン」という名前で流通している食材には、実は種類があり、
という違いがあります。
クマリン含有量の違い
https://www.youtube.com/watch?v=St5TfAeXH7E
肝機能障害を引き起こすクマリンが大量に含まれているのは、安物のカシアの方です。
高級なセイロンシナモンはカシアに比べて、クマリンの含有量が1/300程度と微量なので、肝機能障害の心配が少ないです。
シナモンを摂取するときは、安物のカシアではなく、高級なセイロンシナモンがお勧めです。
Amazonでは、エスビー食品のセイロンシナモンがありました。
セイロンシナモンとカシアを食べ比べてみた結果、セイロンシナモンの方がカシアよりも香りや味が薄いように感じました。
シナモンのレシピ
- シナモンロールのようなお菓子もありますが、フレンチトーストに振りかけたり、食パンを焼いて振りかけると簡単に摂取できます。
- ココアミルクにシナモンを振りかけてもおいしく飲めます。
- カレーのスパイスとして、ちょっと混ぜてもOK?
シナモンを使った料理はいろいろとあるので、レシピはたくさんあると思います。
ルイボスティー
ルイボス(Aspalathus linearis、アフリカーンス語:rooibos)はマメ亜科のアスパラトゥス属の一種である。
針葉樹様の葉を持ち、落葉するときに葉は赤褐色になる。南アフリカ共和国は西ケープ州ケープタウンの北に広がるセダルバーグ山脈一帯にのみ自生する。
ルイボス茶
葉を乾燥させて作る飲み物は「ルイボス茶(ルイボスティー)」と呼ばれる健康茶の一種である。
南アフリカで年間12,000トンが生産され、半分が輸出されている。
ルイボスの作用
ルイボスは、フラボノールやフラボンやジヒドロカルコンやビテキシンなどのフラボノイドを含めた多数のフェノール系化合物を含んでおり、抗酸化作用があるとされている。
さらに、ルイボスティーが食後高血糖を改善し、食後の血糖値の急激な上昇を抑えること、さらに血中の尿酸濃度を低下させ、高尿酸血症、痛風の予防ないし治療に有効であることが明らかになっている。
副作用がなく、安全に長期間摂取できるので、糖尿病、痛風の危険因子(遺伝的、環境的素因など)を有する被験者が摂取するのに適している。
ケープ地方の先住民コイサン人(かつて西欧人からブッシュマンと呼ばれた種族)は古くからルイボス茶の効能を知っており、薬草として採集していた。
ケープ地方に入植したオランダ移民はルイボス茶を紅茶の代用品として用いた。
南アフリカ共和国では牛や山羊の乳と砂糖を入れてミルクティーにして飲むのが一般的であるが、世界のその他の地域ではそのまま飲むことが多い。
ルイボスティーは、南アフリカで生産されており、アフリカ人が飲んでいるお茶だそうです。
陸上競技でアフリカ人が走るのが速い理由は、その1つとしてルイボスティーを飲んでいるからとか?(仮説)
(実際にアフリカ人のトップランナーがルイボスティーを常飲しているのか?聞いてみたいですねw)
ルイボスティーのレシピ
正直、ルイボスティーはあまりおいしいとは思えませんでした。
普段、日本茶やコーヒー、紅茶などに慣れていると、ハーブティーは薬の味みたいに感じられる場合もあるかと思われます。
ハーブティーはスッキリした味わいで、慣れれば普通に飲めるようになると思います。
アフリカではルイボスミルクティーを飲んでいるそうなので、いろいろ混ぜてブレンドしてみたら、おいしい飲み方を発見できるかも?
私の場合はストレートで飲み続けていたら、そのうち慣れてきて、特に味を気にすることなく普通に飲めるようになりました。
ヒハツ
ヒハツ(畢撥)という食材は知りませんでしたが、ロングペッパー(長胡椒)という名前でも流通しているようです。
味は、胡椒の辛みをマイルドにして、若干甘い後味が残るようなスパイスでした。
ヒハツ(畢撥 Piper longum)とは、コショウ科のツル性木質植物。
果実はコショウに似た風味を持っており、コショウと同様にスパイス(香辛料)として利用される。
ヒハツの果実は乾燥させてスパイスや調味料として利用され、しばしば果実目的で栽培される。
実はコショウのそれと似ながらも、より刺激的な風味を持つ。
一方でシナモンのような甘い香りがあるとも表現される。
ヒハツのレシピ
エスビー食品のヒハツはラベルに使い方が記されていました。
主な使い方として、カレーやチャンプルーに使われているとのこと。
胡椒の代わりに使えるので、炒め物などの料理全般に使えると思います。
ヒハツだけだと辛みがちょっと薄いような気もするので、コショウとヒハツを半々で使ったらいいかも?
食レポ
シナモン、ルイボスティー、ヒハツの3つでいうと、ヒハツが一番使い勝手が良かったです。
- ヒハツはコショウを使っている料理なら何でも使えます。
- ルイボスティーは味になれたら常飲できますが、最初は飲みづらいかも?
- シナモンは、お菓子作りやスパイス料理が得意な方なら使いこなせると思いますが、あまり料理が得意でない場合、トーストやヨーグルトにかけたり、コーヒーに混ぜるとかバリエーションに広がりが出ないかも?
まとめ
スポーツでトレーニングをするとき、心肺機能を強化する一環として、毛細血管の増強も図ると効果的だと思います。
シナモン、ルイボスティー、ヒハツなどの食材を日々の食事に採り入れて、毛細血管を増強してみてはいかがでしょうか?
これらの食材をおいしく食べられるようなレシピも開発してみたいと思います!